2024年1月4日発表の ”AITO M9” は AITOブランドのフラッグシップとなるBEVです。中国通信機器大手 ”HUAWEI” と賽力斯集団 ”SERES” が共同開発しました
レスポンス 名実ともにファーウェイカー「AITO」に?
ヘッドライトには130万ピクセルの高解像ADBモジュール「XPIXEL」を搭載し、対向車を正確に遮光するグレアフリーハイビーム機能の他に、路面に文字や記号などのパターンを投影する路面描画機能を備えます。ライトメーカーは常州星宇車灯(Xingyu Automotive Lighting System CO., LTD.)です
2023年12月26日に開催されたHUAWEIプレゼンテーションの動画では、ヘッドライトの照射性能や先進機能に多くの時間を割いています
左から「高精細ADB;XPIXEL」、「ハイビーム」、「ロービーム」
XPIXELパーツ展開図、レンズは舜宇光学製
特長は高解像度と車両近傍投影(3m、他車は7m)
XPIXELモジュール内の光線経路 ; LED ⇒ 反射鏡 ⇒ DLP ⇒ 投影レンズ
特長は高解像度(0.02m、他車は2mで差は100倍!)
対向車を遮光するイメージ
特長は遮光精度(+1.2m、他車は+3m~10m)
中国で130万ピクセルのADBを搭載するカーブランドは長城汽車(Great Wall)、華人運通(Human Horizons)、智己汽車(IM Motors)に次いで4番目です。4ブランドはいずれも米国 ”Texas Instruments社” が供給するDLP(Digital Light Processing)を用いる為、ADB性能では大きな差になりません
M9は差別化として、車両のすぐ手前の路面に描画が可能であることをアピールしています。一般にDLPを用いるADBは、プロジェクターと同じ光学原理の為、明るさと照射範囲はトレードオフの関係にあります。遠方を照らすだけの明るさを確保すると照射範囲を広げることが出来ず、車両のすぐ手前の路面へ光を配分することが出来ません
XPIXELではヘッドライト内部に可動ミラーを搭載しています。手前の路面に描画を行う時は、ミラーを斜めに立ち上げて、前方へ進む光を上向きに反射し、その反射光を上部のミラーで下向きに反射し、車両手前の路面に向きを変えます
XPIXELモジュール前方の可動ミラー
M9のXPIXELモジュールは、ライトの少し奥に位置しているので、単に光学ユニットを下に傾けるだけでは光を手前路面に向けることが出来ません。そこで可動ミラーを用いて問題を解消しています
XPIXEL可動ミラーのイメージ
車両近傍に路面描画を行うメリットは、車両近傍の歩行者や自転車にメッセージを伝えることです。HUAWEIのデモ動画では、”将来シナリオ” として、自動運転中の文字を手前の路面に投影する様子が紹介されています。果たして周囲の歩行者や自転車に気付いて貰えるのか? 有用な機能かどうかは実車を見ないと分かりませんが、着想は面白いです
日本では中国について経済停滞やEVバブル崩壊等が報道されていますが、M9を見る限りエンジニア魂は健在のようです。高機能ヘッドライトの必要性については中国でも賛否がありますが、ファーウェイやシャオミー等の情報通信大手は、EV開発と同時に、街と移動体を通信でつなぐコネクテッドシティの開発も手掛けているので、高機能ヘッドライトを活用するアイデアは豊富にあるかも知れません
中国は不況下にありながらも、個々の車両は、性能や品質を落とさずに価格を下げてきているので、日本の自動車産業にとっては脅威です。日本は半導体や家電が衰退し、自動車産業が最後の砦と言われています。関係省庁や自動車メーカーの経営層は、将来を見据えた施策や、思い切った投資に舵を切っていただきたいと思います